お知らせ

衝撃の久保田講演:「青年の社会認識・戦争認識と、私たちの課題」(7.22 九条の会学習交流会)

【リポート】

7月22日に開催された「あいち九条の会 第20回学習・交流会」は、オンラインを含め約40名の参加のもと、久保田さんの講演に続き分散会形式での意見交換が行われました。当日の講演について代表世話人の見崎徳弘さんからレポートが届きました。このレポートは「戦争させない瑞穂区の会」の通信7・8月合併号に掲載されたものを転載させていただくものです。

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7月22日、本山生協文化会館で開かれた「あいち九条の会」学習・交流会で聴いた久保田貢・愛知県立大学教授の講演「青年の社会認識・戦争認識と私たちの課題」は衝撃的な内容を含み、「う~ん」と考えさせられた講演でした。以下、概要を紹介します。

◆私が絵本を大量に持っている理由・・・

 先日、民医連の新人研修会で講演した時、「ぞう列車がやってきた」つて知ってますか?と聞いたら知らない人がほとんど。学生も同じ、ほぼ1割しか知らない。そんな青年たちに私は絵本を配って読んでもらう。あの戦争の時代がどんな時代だったか、知ってもらうのに絵本は役立つ。

◆地域に生きる人々が見えず関心もない青年たち

 学生に地元の第一次産業の産品で作る“お弁当”の絵を描いてもらい、地元の農水産物を買って料理を作る課題を出し、生産現場から消費者に届くまでにどれだけの人が関わっているか調ぺて発表させると、三河湾で採れたメヒカリが形原漁港に上がり最終的に八事イオンで「メヒカリのから揚げ」として売られるまでとか、レンコンや海苔が弁当に入るまでの過程を丁寧に追う中で、「様々な人が関わっているという事実に圧倒された」という感想が出る。 彼らは普段、地域に生きる人々がどのように働きどんな生活をしているか、それが自分とどうつながっているか見えていないし、関心もない。現代社会に生きる上で、多様な職業と労働、生産・流通・消費を理解し、どんな仕事を選んでどう生きるかを考えるのはきわめて大切だと思うのだが。

◆競争社会の中、「点差」を求める学生たち

 90年代半ばから顕著になった「新自由主義」の下、つねに競争させられ「評価」される中で青年にぱ“学ぶ喜び”が見えなくなり、失敗(低評価)を恐れて「指示待ち」人間になり、評価対象以外の他者や社会には関心が持てなくなっている。「今だけ金だけ自分だけ」(鈴木宣弘)の社会で分断と孤立の不安の中にいる彼らに必要なのは寄り添うこと、受けとめること、聴くことであり、ケアによる安心だと思う。

◆ほとんどの青年は「あの戦争」の悲惨を知らない

 九条の会に集う私たちは「あの戦争」を再び繰り返してはならないという認識で一致しているが、ほとんどの青年は「あの戦争」を知らない。

 近代の日本は何をしたか?─台湾、朝鮮を植民地化し、柳条湖事件(31年)後は「満州国」建国を強行し、中国人の土地を奪って満蒙開拓に27万人(愛知2358人)を送り、盧溝橋事件で日中全面戦争に突入、南京事件(37年)も起こした。その過程で小林多喜二ら反戦平和と自由を求める人々を徹底的に弾圧。やがて東南アジアへの侵略も開始し、41年12月8日、マレー半島コタバルヘの上陸と真珠湾攻撃も敢行して米英やオーストラリアなどとも戦争を始めた。その結果が全国各地への米軍の大空襲であり、広島・長崎への原爆投下であり、アジア2000万・日本人310万人の犠牲を出しての敗戦だった。

◆日本国憲法は「あの戦争」の反省の上に生まれた

 この事実は今も教科書にそれなりに載っているし、映画『きけ、わだつみの声』(日本兵50万・フィリピン100万人が犠牲になったフィリピン戦)、NNNドキュメント「南京事件」(2018年JC J賞)、JNNルポ『棄民哀史』(2016年)など何本もの映画・ドキュメンタリーもつくられている。

 戦争の悲惨を伝える遺跡も全国各地に存在し、中国人・朝鮮人の徴用工犠牲者を卓む碑、空襲で犠牲になった学童の碑も残っている。

 日本国憲法はこの痛恨の歴史を踏まえ、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」(憲法前文)して生まれた。我々は再び侵略戦争をしない、アジア・太平洋を侵略しない、人々の「自由」と「権利」によって戦争をくい止め、「人権」がないがしろにされた時代には戻さない!という宣言だ。

 しかし「召集令状」を“赤紙”でなく赤札”という多くの青年は、この事実を─戦争の悲惨も、その反省の上に憲法9条が生まれ、自由と権利を詳述した10~40条がつくられたことも知らない。

 「教育」が大きなダメージを受けていて機能していないためだ。

 「空襲が全国であった? ホントですか?」という青年たち、「憲法って、戦争の教訓を踏まえてつくられたんですね、初めて知りました」という先生たちが少なくないのはショックだし、「歴史を学んだあとに憲法9条を教える」ぺきところ、小学6年生には「憲法→歴史」の順に学はせようしている学習指導要領を見ると腹立たしい。

◆「九条の会」の発展と改憲阻止に向けて

 だからこそ、「九条の会」につどう私たちの役割は重要だ。頑張っているみなさんにエールを送り、6つ、提案したい。

➀ 「改憲」阻止へ大きな役割を果たしてきたこれまでの運動に自信を。

② 先は長い。「九条の会」に集う人々の様々な運動と努力にリスペクトしつつ、「対話と学習」を重ねよう。

③ メディアとは上手に付き合おう。良識あるメディア人にエールを送り、自らも上手な発信を。

④ 青年をケアしながら、基礎からの語りかけを。成長には時間かかかることを覚悟しながら。

⑤「教育」の再建を。教師たちをケアしながら、教育に自由と科学を。

⑥ 地域の「戦争」学習のために、戦争・平和関連の掘り起こしと保存を。

頑張りましょう。(文責:見崎徳弘)